丹波市 「わく歯科」の院長BLOG

丹波市 歯科 わく歯科

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院長BLOG

中村健太郎先生

中村健太郎先生この写真の人を知っている人は業界でもまだ少ない。  その風貌と射抜く眼光だけなら、まるでヒットマンか、どこかの親分と間違うかもしれない。  事実、新幹線に政治家が乗ってくると、そのSPがわざわざ隣に座って張り付くそうだ。 実はこの人が、歯科の業界で今をときめく中村健太郎先生に他ならない。 一度講義が始まると、まるでノンストップムービー(本人いわく)のようにトイレ休憩もなく、水で喉を潤すこともなく、3時間以上話っぱなし。 その細い体のどこにそんなパワーが隠されているのか毎回驚かされる。 そして何より驚かされるのは、その講義内容の奥深さと、知識量、考え方だ。 「医療である限り、いちいち宣伝しなくとも、すべてに妥協せずにやるのが当たり前だ」と言い切る、その医療人としての潔い姿勢に感服させられる。   セミナーのタイトルは『補綴臨床ステップアップセミナー』だ。 補綴とは歯の被せ物や入れ歯のことで、実際作るのは歯医者でなく技工士さんが作ることがすべてと言って過言でない。 歯医者が患者さんの実際の歯を削って、型を採ったものに、石膏を流して作成した模型が、技工士さんの仕事のキャンバスになる。 つまり実際の歯とその模型が同一の形をしていなければ、技工士さんは最初から歪んだキャンバスの上で仕事をすることになるわけで、それだけは防がないといけない。 しかし歯が石膏の模型になり、それが患者さんの歯に戻るまでには、さまざまな工程の中で、さまざまな材料に置き換わりながら、被せに形を変える。 その中の工程にどこか一つにエラーがあれば、それを取り戻す作業は当然患者さんの口の中になってしまう。 合わない被せを何度も調整し、迷惑を被るのは患者様だ。  中村先生の臨床はそのどの工程にも妥協がない。 精密な被せを作るには、どのような材料をどのように使うことで達成されるか、実は歯医者や技工士ならすでに知っていて当たり前と思われることを、繰り返し叩き込まれる。    私はその講義を聴講しながら、ある人のことを思い出した。  それはNHKの「ザ・プロフェショナル」という番組に出演されたパティシエの杉浦さんという方だ。その方はフランス?の一流のパティシエの元に3年通われて、何とか働く許可を得て修行されたそうだ。 そこで見たものは何も特別なレシピはなく、教科書にすでに載っていることを、一切妥協せずにやり抜く姿だったと言われていた。 その当たり前のことを、妥協を加えず積み上げた結果は、信じられないほど特別な味だったと振り返られていた。 傷みそうなイチゴやベリーはすぐに捨て去り、ケーキの命とも言える生地の調合と混ぜ合わせは、一番のパティシエが担当する。 つまり目に触れるデコレーションよりも、基本の部分にこそ全力を注ぐ、それこそがスペシャルを作り出すということだ。  「根深ければ葉繁し」という言葉があるが、基礎基本の土台がしっかりしてこそ、眼に見える部分も大きく花開くというわけだろう。  中村先生の臨床はまさにその基礎基本を徹底して教え込まれる。 だからなかなかその先の質問は受けてもらえない。 生地の作り方もまともに出来ないで、飾り付けの話を聴いても仕方ないということだ。全くその通りで、いつも質問をたくさん用意していく私も、今回だけは大人しく聴いている。 歯科の他のセミナーは飾り付けの話が全盛だ。 患者さんにとってもすぐに目につくし、歯医者もこの時代にあって、てっとり早く結果を残せるからだ。  中村先生の話を聴いてから、まず材料や器具を一新した。 正しいことを知ったのにやらなければ、それは患者さんにとっても罪だろう。 それに早く生地づくりを覚えなければ、千の風になるまで次の質問も出来なくなる。プロフェッショナルの世界が本当に奥深いことを、改めて実感させられる中村健太郎ワールドだった。  次回は7月の半ばにある。せめて生地づくりまではマスターしていたいと思う。