警察歯科のお仕事
今日の講演は城崎の河原忍先生による 『警察歯科の仕事』 というとても興味深いものです。
日ごろから受講料を支払って行く講演やセミナーは、歯科の技術的な内容のものが多く、なかなか今回のような話を聴く機会はありません。
以前酒の場で聞いた河原先生の話があまりに面白く、今期歯科医師会の学術委員である私として、どうしても聞きたいと駄々をこねて、通してもらった企画でした。
河原忍先生は我が丹波市の会長である、河原悟先生のお兄様にあたり、あの御巣鷹山で多くの犠牲を出した日航機事故でお父様を亡くされました。
そのさいに懸命に検視されていた群馬県の警察歯科の皆さんに心打たれて、ご兄弟でその道を志すことになったと言われています。
つまりご自分も被害者遺族としての経験をなさったことで、より一層早く被害者をご遺族の元にお返しすることを常に心がけておられるそうです。
そのためこの講演の前日も、豊岡のヘリコプター事故を徹夜で検視され、いち早くご遺族にご遺体を返された後で、大変お疲れだったはずにもかかわらず、快く講演して頂きました。
阪神大震災や福知山線の脱線事故、一庫ダム殺人事件の被害者特定など多くの事例を解決された貴重な話と、私どもでさえ目を覆う写真の数々に、同じ歯医者として驚くと同時に誇りにさえ感じました。
先生は公安規則で検視を行える者の中に、歯科医師が入っていないという旧法律を変え、歯科医師の身分保障に全精力を注がれたということでした。今後歯科医師が検視を堂々と行えるとすれば、河原先生をはじめとする多くの先輩方のご尽力で敷かれた道を歩いていることを忘れてはなりません。
事件が起これば、ご自分の診療を切り上げてまで現場に駆け付ける。
簡単なことではありません。
しかし「それが自分に出来る唯一の社会貢献である」と迷わず言われる姿は、
私には神々しくさえ映りました。 先生のこの仕事に対する使命感がヒシヒシと伝わってきました。
話を聴いた会員のもとにいつ依頼が入っても、皆喜んで出役されることでしょう。