丹波市 「わく歯科」の院長BLOG

丹波市 歯科 わく歯科

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院長BLOG

ツリーオブライフ

ときに一人で観たい映画があります。    隣のイビキや知ったかぶりを後で聴かされたり、言うのが辛い しかし一人で哲学したいときに、 アベックに挟まれてぽつりと空いた良い席で 腕組みしながら観る映画 それが「ツリーオブライフ」でした。  カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したこともあるでしょうが、 このような映画にしては、客席が埋まっているなと感心しました。  

 「生き方にはふたつある  

世俗に生きるか  

神の恩寵に身を委ねて生きるか 

どちらかを選ばなくてはならない」

 神に委ねる生き方を選択してきた母の下に、 19歳の次男の訃報が伝わるところから物語は始まります。 その時の母の悲しみの深さは、 神に対する深淵なる問いかけに置き換わり、 時空を超え、宇宙と生命の誕生と消失へと私たちを誘います。 まるで「2001年宇宙の旅」のようなオープニングが、 一つの命を巡って、単なる死生観を超えた 根源的な想像を観客に喚起するのです。 その後もカメラは事あるごとに、天を向き、 木陰から射す木漏れ日、空に漂う雲、 青く澄み切った光と私たちに神の存在を否応なく感じさせます。  そして物語は残された長男(ショーン・ペン)の 数十年後の深い悲しみへと連鎖され、 自分たち兄弟の誕生と生育の歴史が語られます。 父(ブラッド・ピット)は「世俗に生きる人」であり、 他人を支配して生きることしか出来ない人。 子どもたちは怖れ、憎み、 それでも愛のないキスを強要する父の頬に、 笑うことなく身を寄せます。 父と母の一つの家庭で見せる対極の愛に挟まれ、 子どもたちの心が壊れ、傷つく姿が痛たましい。 そして彷徨いながら、彼らは確実に変貌していくのです。 ところが何十年経って、いくら顔に皺が刻まれようと、 現実社会の中で支配しながら生きる彼らは コンクリートジャングルでも空を見上げ、 苦悩と迷いを打ち明け許しを乞い続けます。  そしてエンディング。 岩場で彷徨いながら自分の記憶の中の 多くの人々に抱擁され物語は終わりを迎えるのです。 若い時ならこのような観念的映画を観ると、 「解らない自分」「共感できない自分」が恥ずかしく、 偉そうに解説していたかもしれません。 しかし今は映画として面白いか面白くなかったかだけ。  さすがに日本で1800円も払って途中退席する人はいませんでしたが、 他の国では結構あったそうな。 確かに批評家受けはいいでしょうが、 忙しい現代人がビルの谷間で観る映画としては、 もう少し高揚感がほしかったというのが本音でした。  きっと暇な学生時代に出会っていたら、 また感想も違うものになっていたんでしょうね。 ただ父と言われる存在だけは、 いつの時代も理不尽な支配者であることは確かなようで、 私も父親として身につまされました。  まあこれから哲学したいときは、 白熱教室でサンデル先生の講義を聴くことにしましょう。 神の恩寵に身を委ねて