医療フォーラム『子持ち産婦人科勤務女医って大変すぎます!!』
薬剤師の中原のり子先生と産婦人科の野村真美先生の講演です。
中原のりこ先生は悲しいことに過労で自殺なさった中原利郎先生の奥様で、
医師の過労死について全国で講演され、ご自身も現在裁判で係争中の方です。http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/
時折声と詰まらせ、涙ながらにお話になられる姿に、私も胸がいっぱいになりました。
信じられないことにご主人の過労死が認められないばかりか、
医師の当直は例え一時も眠れない激務であろうと、
電話番という扱いしか受けないという現実に、現場を少なからず知る者として、
その理不尽さに呆れかえり、怒りがこみ上げてきました。
子持ちであり、女医であり、勤務医であり、産婦人科でありと、
何重苦にもなるその私生活は、私たちの想像を絶する過酷さでした。
出産後3カ月で職場復帰することになると、夜も眠れない勤務の中で、
ひと月では母乳は枯れ、それからというもの度重なる勤務地の異動と激務で、
重度のうつ病になられたとのことです。
その時の話は後の宴会で聴くことになるのですが、
講演では到底話せないような壮絶な事態さえ招きました。
ご主人や子供さんだけでなく、それを支えるご家族さえ巻き込んでいく悲劇に、
聴く者全てが戦慄を覚えたのではないでしょうか。
なぜそこまでして・・・・そう、このような医師の犠牲のもとに成り立つ日本の医療の現実に、
疑問を抱き、恐ろしく感じたはずです。
野村先生は各地で日本の産科の現状を訴えて来られました。
しかし自分のことをお話しになられるのは今回が初めてだったそうです。
聴衆もそこに立つひとりの医師を、初めて「人間 野村真美」として見ることになりました。
それは柏原病院に勤務される先生方も同じです。
上田先生も丸尾先生も50歳を過ぎ、それぞれが150日、200日と当直され、
この地の産科医療を支えて下さっています。
その背景にはご家族もあり、ご家庭の事情もあるはずです。
しかし私たちは日本にいる限り、
世界一安全な医療を安価で受けることを当たり前のようにしてきました。
それがいつしか権利意識の増大を生み、
目の前の医師に対する感謝の気持ちを忘れさせてしまったように思います。
医師の犠牲と使命感のうえに、
かろうじて架かっている危うい吊り橋のような存在が、
日本の医療の現実であることを忘れてはいけません。
最近心臓を悪くされ、しばらく柏原病院で入院されていた丸尾先生が、
ビデオレターの中で笑いながら呟かれた言葉が心に響きます。
「こんな生活をずっと続けていると、
何が正常で何が異常なのかがわからなくなりました。」
奇跡の市民運動と評される丹波にあってさえ、
医師の感性を麻痺させてしか支えることの出来ない医療の実態は、
あまりに重いものを私たちに残すことになりました。