ポルトガル マロクリニック研修②
研修初日
8時15分にロビー集合なんで、
時差ボケなんて言っていられません。
開きっぱなしのスーツケースを整理して、
シャワーを浴びて、慌ただしく身支度
その時です。バスで奇妙なものに気付きました。
これってどっちに座るんやろか?
やっぱり右やろな~
じゃあ左は何?洗濯桶?
実は後で聞いたのですが、
これお尻洗いだそうです。
何と用を足した後に、
ここに前向きに座って洗うらしい
ってことは、前の人が洗ったところに
水を張って、またお尻浸けるんですか!?
う~ん、異文化交流は精神的、衛生的にも
タフでないと出来ないな~
ウシュレットのある幸せを噛みしめました
なんて言っている場合じゃありません(汗)
主催のノーベルバイオケアに聴いたところ
講義はカジュアルでいいですよとのことだったので、
ところがロビーで集合されている先生方、
皆さんネクタイ着用ではないですか!?
しかし着替える時間もなく、
ひとりジーンズ姿で行くことに
マロ先生最初からごめんなさい
ということでロビーに集合した先生方に
いきなり本に貼られた
多くの付箋が差し出されます。
これくじ引きなんです。
マロ先生のライブオペが研修中6件あるので、
オペ室に入室する順番を決めるくじです。
私は最後に残った付箋をとると、
1と書かれています。
つまり最初の組になりました。
実はこれがとんでもなく儲けものの、
残り福になるんです。
外に出て、
昨日暗闇にそびえ立っていたマロクリニックを見て、
改めてその巨大さに圧倒されました!
だって全貌を収めるには、
道の向こう側まで行かないと入らないんです。
入ってまたビックリ
どこもかしこも総大理石ではありませんか?!
7階の研修会場に上がると、
同時通訳のヘッドホンを付けて各自準備します。
今日の患者さんの紹介の後、
ライブの手術風景が映し出されます。
「ハロ~!こぉんにちわ!」 と
僕たちに手術室から話しかける声
パウロ・マロ先生です!
その後1番くじを持った受講生が呼ばれます。
ドキドキワクワク
6人のメンバーで9階のオペ室に階段で上がりました。
オペ室に入室する前には、
靴の上からこのようなビニールシートを被せます。
靴を履き替える習慣がないからの工夫なんでしょう
ここからは手術中は写真撮影出来ません。
手術内容は上顎のALL ON 4です。
手術のスタッフは総勢6名
マロ先生、直接介助が2名、間接介助1名、ドリル係1名、
そして無影灯に設置されたカメラ係1名
他にも機械、PC担当者?らしき方が一名
そこへ私たち6名ですから、
非常に狭くなるだろうと思いましたら、
いえいえとんでもありません。
日本なら余裕で
チェアー3~4台置けそうな手術室の真ん中に、
STERN WEBERのチェアーがポンと一台
ゆったり広々 全く息苦しさを感じさせません。
手術は局所麻酔で左右犬歯を抜いて、
歯肉を切開剥離、徹底掻爬、骨整形後、
ドリリングしてインプラント埋入です。
右の5番に上顎洞を避けて傾斜埋入してからは、
立て続けに前歯に2本埋入。
早いこと早いこと、ここまで30分掛ってません。
ところがここからこの手術が残り福になったのです。
実は左の傾斜埋入が骨質が柔らかすぎて、
50Nのトルク値がかせげないとみるや、
大きなため息一つ吐いて、
ポルトガル語で何やら指示
するとスタッフが瞬時に
見かけない代物を用意し出しました。
マロ先生は最後臼歯の縦切開を延長して、
頬骨弓まで剥離して
リトラクターをかませます。
もしかして!?
僕の頭にある手術名が浮かびます
あれが見れるなんて、なんてラッキー!
それはザイゴマインプラント!
日本では逆に古く危険な術式として、
ほとんどやる人はいないはず
ところがここからの手術は
私の知っているザイゴマではありません。
頬側の上顎洞壁をカーバイドバーで切削して、
上顎洞粘膜を露出
そこからザイゴマのプラットフォームを
歯槽頂よりやや口蓋に位置させ、
長いドリルバーで頬骨弓に埋入窩を形成
初めて見るタイユナイト加工の5センチもあるザイゴマを
50N以上で入れて手術終了
今から即時荷重です
ザイゴマに切り替えてからおよそ10分足らず
総手術時間も45分程度
確かにこれなら局痲で可能かも
しかし新しいザイゴマをこんな形で見れるなんて、
これだけでも来た甲斐がありました。
後の講義で、
ALL ON 4にはStandad Case、
Hybrid Case と
ExtraMaxilla Caseがあることを知りました。
後の二つは即時荷重させるには、
ザイゴマしかなく、
マロクリニックでは
サイナスリフトも骨移植も全くやらないらしいです。
確かに上顎の高度な骨吸収の患者さんでは、
これまでの術式で考えると、
即時荷重は絶対無理でした。
しかし確かにこれなら可能かもしれません。
マロクリニックにはこのようなすぐに噛ますことは
不可能と言われた患者が、世界中から集まってきています。
それもあのようなザイゴマは日本でも未発売で、
ノーベルの社員さえ見たことがないとのこと
ただしマロ先生自身も当初その予定ではなかったのと、
我々には見せたくなかったのでしょう。
その後の講義では、
しきりにその話はしないと釘を刺されました。
午後からは臼歯部にスピーディーインプラントを3本のケース
即時荷重ではなかったでしたが、
手術そのものは20分ぐらいで終わりました。
14階から7階までを教育担当の方が案内してくれました。
14階はVIP室も完備された快適なリカバリーフロアー
術後補綴物が出来上がるまで、一旦ここで過ごすようです。
13階はどの患者も一番最初に通る、受付と待合室
見学をする全ての医療関係者が圧倒されるそのスケール
テラスまで完備されたカフェ
インターネットスペース
そしてまるでイオン顔負けの恐ろしく広いチャイルドスペース
何じゃこれは・・・・
その後は順次各フロアーを廻りました。

JAPAN KOBEと書かれているコーナーには、
手術フロアー、矯正フロアー、エンド、補綴、
技工、メインテナンス 小児歯科と
それぞれが独立した専門フロアーを案内して頂き、
皆溜息しか出ません。
専門ごとに制服が違っており、それぞれが強烈にプロフェッショナル意識が高く、
皆生き生きとした笑顔で、遠く東の島国から来た私たちを迎えてくれました。
マロ48歳
モデルなどで生計を立てながら医科歯科薬科のライセンスを取得
牧場を経営し、広大なワイナリーを持ち、
私たちの研修中も4時間にも及ぶ
ドキュメンタリー番組のクルーが、ずっと撮影していました。

モデリングする要素がからっきし見当たりません。


夜はマロクリニックの地下にあるマロレストランで、
マロワインを飲みながらのマロディナーです。
その途中にはカラオケで、
マロクリニックのプロモーションビデオとテーマ曲が繰り返し流され
右を向いても左を向いてもマロマロマロ
お土産もマロTシャツ、マロキャップ、マロUSB、
マロボールペン、マロワインまで研修会場には
売ってあります。
手術のDVDは250ユーロ以上
という私がスタッフの土産を買いあさっていました。
日本帰ってきたら何も使わなかったな~
ザイゴマ以上の成果になったかな。
本当にモチベーションが高く、専門力、人間力に優れて